川村元気『百花』あらすじ・感想

こんにちは!
現在、小規模多機能型居宅介護にて介護士やってます、TARO(@taro26179991)です。


今回は認知症をテーマにした川村元気さんの「百花」という小説を紹介します。

川村元気さんといえば、「電車男」「告白」「君の名は」など多数の有名映画のプロデューサーとして知られていますが、「世界から猫が消えたなら」「億男」といった小説家としても活躍しています。

本作は実際に著者の祖母が認知症になった体験が元となっています。主人公の母がアルツハイマー型認知症になってから、症状が進行していく様子を丁寧に描いています。

あらすじは?『百花』

レコード会社勤務、38歳、主人公・葛西泉は社内結婚した妻がいて、もうすぐ子供が生まれる。
泉は大晦日に実家に帰ると、母がいなかった。夜の公園でブランコに乗る母・百合子。それは母が息子を忘れていく日々の始まりだった。
認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら、泉は母との子供の頃の思い出を蘇らせていく。ふたりで生きてきた親子には、どうしても忘れることができない出来事があった。母の記憶が失われていくなかで、泉は過去に「一度、母を失った」ことを思い出していく。
「あなたは誰?」

認知症になり、すべてを忘れていく母と、母との思い出を蘇らせていく息子との物語。

全体を通して、場面がテンポよく展開され、とても読みやすい内容です。普段本をあまり読まない方にも、おすすめな一冊です。

感想『百花』

母・小百合の視点

冒頭で失踪するシーンで、母・小百合の目線が描かれています。

ドアを開けると、黄色の空が広がっていた。
雲ひとつないが、太陽も見当たらない。わたしは坂を下り、突き当りの角を左に曲がる。急がなくては。泉がもうすぐ来るのだ。
~中略~
誰か助けて!父と母の後ろ姿が見えなくなると、わたしはブランコにへたれ込み、さびたチェーンを揺らしながら空を眺めた。ピシッとガラスが割れるような音がして、黄色の空にヒビが入る。

小百合の頭の中で様々な記憶が交錯している。ついに途方に暮れて、公園のブランコで座り込んでしまう。

以降も、認知症の症状が進んでいく中で、混乱する小百合の目線が丁寧に描かれています。そんな中で、泉は小百合の書いたあるメモを発見します。そこには記憶を忘れていく小百合の忘れたくない大切な記憶が記されていました。
認知症を患う母と息子の切ない物語に胸がいっぱいになりました。


後半の展開

後半は、泉と小百合の過去のある事件に焦点が当たります。
これまで仲のいい親子として描かれていた二人にも、過去に忘れられない事件がありました。泉は小百合の過去の日記を通して、これまで触れられなかった記憶について知ることになります。

「認知症で記憶が失われていく中で、残り続けるものとは何か?」

そして独居で暮らす認知症の母に対して、泉はどういう結末を選ぶのか?最後まで気になる展開でした。

まとめ

認知症というテーマを扱う作品の中では、とても読みやすく、終わり方も好きな作品でした。
特に母・小百合側から描かれる視点がとても心にグッときました。

また本作のように離れて暮らす親の認知症の異変には気付きにくものです。そして気づいたときには、自宅での生活が継続困難なほど症状が進んでいる場合もあります。
「親が認知症になったら、どうするか?」ということを考えるきっかけにもなると思います。



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