こんにちは!
現役介護士のTARO(@taro26179991)です。
今回は、フランスで生まれた認知症のケア技法である『ユマニチュード』をまとめてみました。
私が介護の仕事を始めた頃、次のようなことが何度かありました。
☑入浴介助の時に、利用者の方から強く拒否されて困惑した
☑他の職員は拒否なく介助させてもらえるのに、私だけできない
研修などで、“高齢者の尊厳の保持”や“残存機能の活用”と教わりますが、介護を始めたばかりの頃は具体的なやり方が分かりませんでした。そんなときに出会ったのがユマニチュードでした。
『ユマニチュード』とは?
ユマニチュード(Humanitude)はフランスの体育学を専攻するイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティの2人によって作り出された認知症のケア技法。
名前のユマニチュードは、フランス領の植民地出身の黒人が「黒人らしさを取り戻そう」と始めた運動「ネグリチュード(黒人らしさ)」をもとに、人(Human)と掛け合わせたもの。
『ユマニチュード』の成り立ち
ユマニチュードは、実際に医療介護の現場で35年間ケアしてきた経験から生まれています。
イヴ・ジネストらは利用者がケアを拒んだり、嫌がる姿を何度も見てきました。その中で、ケアする人によっては、拒否なく簡単に介助できていることに気付きました。ここから「どういうケア(介助方法)がケアを受ける人・ケアする人の双方に満足のケアなのか」という研究が始まります。
また、これまでの医療現場ではベッドの上で安静が基本とされてきましたが、彼らは、「それが高齢者の尊厳に関わる「立つ」や「動く」という行為を奪ってしまている」とも指摘しています。
このように現場での経験がもとになっているため、介護現場で実践しやすい・すぐに使える方法が多くあります。
『ユマニチュード』の効果
病院などでユマニチュードを導入した結果、治療に拒否のあった認知症の方が、協力的になった、向精神薬の使用量が減る、介護者の負担が減る等の効果が確認されています。
介護の現場でも、傷の処置や服薬、入浴介助など必要度は高いが、認知症などの症状で拒否が強く、ケアが困難な状況が多々あります。そんな時にユマニチュードを取り入れることで、本人はもちろんのこと、家族や介護士にとっても楽に安心して介助が行えます。
『ユマニチュード』の思考法
(1)相手との人間らしい関係性
ユマニチュードは、相手との人間らしい関係性を中核とする哲学です。認知症などの病気や老化によって、コミュニケーションが難しくなると、人間同士の関係性が失われやすくなります。(会話の機会・交友関係が減る)
その中で介護では、食事・排せつ・睡眠といった相手のパーソナルな行為へ関わりが多いからこそ、ユマニチュードはまずは相手との人間らしい関係を作ることを大切にしています。そして相手を一人の個人として尊重するための、「見る」「話す」「触る」というケアが基本となっています。
(2)相手のレベルを正しく観る
ユマニチュードでは、高齢者の現在のレベルを評価し、それに合わせてケアしていきます。具体的には、次の3つの段階に当てはめて考えます。
①回復を目指す(治療・リハビリ)
②現在の機能を維持
③穏やかで苦痛の少ない生活(看取り)
この評価を誤って過度な介助をしてしまうと、高齢者にとって害にもなりえます。ちなみに「ベッド上での安静は1週間で20%の筋力低下をきたし、5週間で筋力は50%になる。」とされています。
さらにユマニチュードでは、相手のレベルを正しく評価したうえで、「立つ」機会を積極的に作っていきます。
終わりに
今回はユマニチュードの思考法についてまとめてみました。
いかがだったでしょうか?
感想や意見等をTwitterやコメントまでいただけると助かります。
介護現場では、次のような環境が自然と生まれやすいです。
・病気や老化によって、コミュニケーションが難しくなる
・“介護する側”と“介護される側”という一方向の関係性
・同時に複数人を相手にする介護現場
すると、つい相手との人間らしいコミュニケーションをおろそかにしてしまいがちです。私自身も忙しい現場で、つい流れ作業のように介護をしてしまい、後で反省することが多々あります。そんな時にユマニチュードの考え方は、私の介護の原点(時々振り返る)となっています。
ぜひ普段の介護の中に、ユマニチュードのケアを取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考資料
『ユマニチュード入門/著 本田美和子』
『ユマニチュード認知症ケア最前線/著 望月健』
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