認知症と園芸療法 - 認知症になったら、花を植えよう。


こんにちは!
現役介護士のTARO(@taro26179991)です。

今回は、高齢者や認知症の方への園芸療法の内容と効果をまとめてみました。
春から夏にかけて花や野菜を育てることも多いと思いますので、よかったら参考にしてみてください。

『園芸療法』とは?

草や野菜などの自然とのかかわりを通して、心や体の健康、社会生活における健康の回復をはかる療法
植物の「癒やし」効果によって、ストレスを緩和し、人の心身の健康を図る。植物を眺めたり、風の音を聴いたり、花や土の匂いを嗅いだりといった、5感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)で感じることで、ストレスを和らげ、身体の調子を整える。

では、高齢者や認知症への園芸療法の具体的な効果についてみていきます。

認知症と園芸療法の研究


国内の介護施設での高齢者を対象にした園芸療法の研究を紹介していきます。

軽度・中程度認知症高齢者への園芸活動の効果は?

介護老人保健施設の軽度~中程度の認知症の方、20名を対象にし、園芸活動プログラム(週 1 回、屋内で 30 ~ 40 分程度)を実施する期間と実施しない期間を交互反復し、意欲・ADL・行動症状・認知機能を評価する。

結果として、園芸活動の期間では、ADLを除く、意欲、行動症状、認知機能に有意な差がみられた。

『軽度・中等度認知症高齢者に対する園芸活動プログラムの有効性の検討』
(増谷順子,太田喜久子 )より


①意欲の増加
週1回の園芸活動を通して、対象者の『リビリテーション・活動』『コミュニケーション』に関する意欲が増加しています。活動時間外でも、水やりなど日常的な世話が必要であり、成長の期待感から自発的な水やりや観察といった意欲が生まれたとしています。また成長の変化などを他者と共有することで、新たな他者との交流が生まれます。

②認知症の行動症状の減少
施設内での園芸を通して、他者との交流が生まれたことで、個人の取り巻く環境が改善され、精神的な安定にも繋がります。これによって、帰宅欲求や暴言といった認知症の行動症状が減っていると考えられます。

③認知機能の改善
6週間の園芸プログラムで認知機能の少しの改善がみられています。(MMSE:中央値19.5→20.5)特に季節や日付の認識する見当識の改善がみられました。認知機能が低下すると外部の環境の認知がしづらくなりますが、日常的な植物の世話で季節や日時の繰り返し認識し、見当識が強化されていきます。


高齢者にとってQOLの高い園芸活動は?

特別養護老人ホームの入所者やショートステイ利用者、30〜40名に様々な園芸活動(ジャガイモ植えや田植え・稲刈り、フラワーアレンジメントといったの植物を使った創作活動)に参加してもらう。対象者の活動の様子を記録・評価し、QOLの高い活動の特徴を検討する。

「特別養護老人ホームにおける園芸活動の特徴とQOLとの関係』三宅優紀より


【入居者にとって、QOLの高い園芸活動の特徴】

  • 屋外での活動
  • 細かい作業より、大きなゆっくりとした動きでできる
  • 使用した野菜や植物が馴染みのある・季節感のある
  • 日常的に継続的してできる活動(種まき→水やり→収穫)


※今回紹介した研究は、対象者が1施設、数十人と少ないです。そのため個人差(例えば、認知症の重症度・個人の園芸への興味)や実施する期間・頻度によっては、新たな検討が必要かもしれません。

認知症の方との園芸活動の良い点

  • 屋外での農作業を通して、「見る」「触る」「嗅ぐ」「聞く」「食べる」といった五感の刺激を感じやすい
  • 屋外の様子や気温を感じ、 見当識や季節感を強化される
  • 種・苗植え~水やり~収穫といった継続的な活動によって、個人の役割や日々の楽しみに繋がる
  • 農作業や成長過程で、他者との会話が生まる
  • 他者との穏やかな交流によって、帰宅欲求や他者への暴言が減る



終わりに…

今回は、高齢者や認知症の方への園芸療法をまとめてみました。
実際に介護施設で野菜つくりをしてみると、私たちよりも入居している高齢者のほうが、花や野菜の知識や作り方を知っていたりと、逆に教わることも多かったりします。認知症の方でも若いころに覚えた農業のやり方も結構覚えてたりもします。

この記事を書きながら、「高齢者や認知症の方がもっと気軽に農業や園芸をきっかけに集まれる場所があればいいなぁ」なんて考えたりしてました。

ちなみに海外の例ですが、オランダでは農場や牧場で積極的な高齢者の受け入れがされているようです。日本でも今年度より、介護予防の地域支援事業の中で、利用者が農業などの就労的活動に関われるようなマッチングできる仕組みつくりに予算が充てられる予定となっています。

以上、最後までお読みいただきありがとうございます。
本記事で感想や意見等をありましたら、Twitter(@taro26179991)までいただけると助かります。


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